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▼第147回 タキシード

 

 タキシードは襟に拝絹という絹素材を使うことが条件です。急にパーティに出ることになったのだけれどタキシードを仕立てる時間がない、というお客様がご来店。お手持ちの略礼服の襟に拝絹を後付けしました。これでとりあえずはタキシードとなります。

 ただしスタッド釦付きのウイングカラー・シャツとシルクの蝶ネクタイ、カマーバンドなどの小道具はしっかり揃えて頂きました。市販の蝶ネクタイはポリエステル製が多く、お勧めできません。小道具さえいいものを使えば立派なタキシードになります。

▼第146回 スーパー140

 

 ベージュの生地の耳にはスーパー120、紺ネズの生地にはスーパー140の文字が入っています。これは生地の原料である羊毛の太さを示す数字で、多いほど細い毛が使われています。

 スーパー120に使われている羊毛は太さ17,5ミクロン

スーパー140に使われている羊毛は太さ16,5ミクロンです。

西洋人は紀元前から羊を飼っていて、数千年もの間品種改良を繰り返しています。
この羊の両親からはこのくらいの太さの毛を持った子羊が生まれるという経験則ができているといいます。

細い毛を使った生地は柔らかくしなやかで手触りが良いのですが

シワになりやすく丈夫さに欠ける傾向があります。

 とはいえ同じ太さの羊毛を使っても糸にする段階で様々な工夫がなされ、

生地に織りあげるにもいろいろな手法があるので一概にはいえません。


▼第145回 英国生地


薄くて軽い生地が世界的に流行なのですが
テーラーロンドンという屋号の当社は
今も固い英国生地を今も愛用しています。
柔らかいイタリア生地は着る方の体の線に
沿ったふんわりした出来上がりになりますが
英国生地は仕立屋のイメージ通りのスタイルに
きっちりと仕立て上がります。

写真のドーメルは明治時代の日本に
始めて上陸した英国生地で現在でも
トップブランドの座を維持しています。

▼第144回 アイロン


長年使っているタキイ電器(大阪)製アイロンの調子が悪くなったので
電気屋さんで市販の新型(写真後方)を買ってみたのですが…
軽すぎて私どもの仕事には使えませんでした。
やはり愛用のものを騙し騙し使うしかないようです。

西日本の仕立屋ご用達だったタキイのアイロンも
今では生産中止になってしまいましたから。


▼第143回 下釦はとめません

上写真はごく一般的な二つボタンの上着です。
上釦は縞の真上でとまっていますが
縞柄を下方にたどっていくと
下釦のボタンホールは外側に3mmほどずれています。
前の打ち合わせラインがカーブを描いているので
そのラインに沿って写真右側にずらして
釦穴を空けているのです。
同じ理由で下の釦は向かって左に3mmずれた
位置に付けられています。

したがって下の釦はとめることができません。
無理にとめるとひきつれシワができてしまいます。
下釦は単なる飾りなのです。

▼第142回 アンコン仕立て

裏地、パット、芯などを極力使わない
アンコンストラクティブ(非構築)といわれる
お仕立ての麻100%のスーツです。

外側はアウトポケットにせざるを得ず
内側にもひとつだけ内ポケットを作りました。
写真のネームを付けた部分がそうです。

たいへん軽く、着やすいのですが
縫製が難しく手間がかかります。
それなのに一見して
ずいぶん簡単に縫っているように見えるので
お客様からお金を頂きにくいところがあります。

また着こなしも難しくどうかすると
だらしなく見えてしまうので
滅多な方にはお勧めできません。


第141回 遠方のお客様

 当店の、とくにハンドメイドをご要望のお客様は半分以上が県外からお見えの方です。
地元のテーラーが廃業したためネットで方々探した結果当店を見つけてくださった
というお客様が中国地方はもとより東京、大阪、九州、四国からもいらっしゃいます。
一番遠方のお客様は栃木県の方でした。

 遠来のお客様でもお仕立てするには結局はお会いするしかありません。
本来なら

1、採寸と生地選び
2、仮縫いを試着
3、納品して出来上がりを確認

と3度お目にかかりたいところですが、それではたいへんなので
なるべく一度のお出かけで済むようにしたいものです。
そのためには

1、事前にデザインやご希望内容をメールや電話で何度も打ち合わせ、
だいたいのお体寸法をお聞きします。
デザイン画や生地サンプルを郵送することもあります。

2、型紙を起こし、ダミーの生地で仮縫いを準備します。

3、一度だけのご来店時に生地を選び、ダミーの仮縫いを試着頂きます。

4、出来上がりは宅配便でお送りします。

 出来上がりのご着用姿を見られないのは辛いところ。
万一気になる点があればいつでもお直しするのですが、
幸いにもそのようなケースはこれまでほとんどありませんでした。
それだけ慎重に事を進めますから。

 二度目からは生地選びだけでも良いのですが、
労をいとわず何度でもご来店下さるお客様は
少なからずいらっしゃいます。

141回 お支払い

 

 当店でのお支払いはどのような形でもお受けできます。
JCB
VISAなどのカード会社とペイペイやd払いなど知る限りのキャッシュレス決済に対応し、
分割払いやボーナス払いもOKです
完成した洋服を遠方のお客様にお送りする場合はお支払い手数料がかからないよう
郵便振込用紙やスマホ決済用QRコードを同封。
常にお客様の利便性を最優先いたします。

 しかしここだけの話、少々お支払いが遅れてもかまわないので
現金で頂戴できるのが一番有難いです。
キャッシュレス決済は店が手数料を負担していて、
カード払いの場合お客様のお支払い額が10万円なら4~5%の手数料を差し引いた9万5千円ほどが振り込まれます。
なので私はレストラン等でも現金を使うようにしています。

いえ、当店のお客様は本当にご都合のよい形でお支払い頂ければ有難いばかりです。本当です。
          
▼140回 英国直輸入の冬生地

以前はお盆前になると商社に注文していた
英国、イタリア製の冬生地がどっと送られてきて

お馴染みのお客様に「冬生地入荷いたしました」
というご案内状を発送していました。
当時は船で生地を運んでいたために
季節前になるとにある日一斉に店頭に新作が
並ぶという状態になっていたのです。

近年は生地の輸送も飛行機便が多くなり
シーズンと関係なく輸入されるようになりました。
写真は英国の生地商社のHPを御覧になった
お客様からご注文があったハリソンズのフラノ服地で
当方から商社に連絡して1着分だけ空輸してもらいました。

近年はそんなこともできるようになり
いつでも全シーズンの生地が揃っています。


▼139回 造り酒屋


日本ではどの県にも古くからの造り酒屋があり
独自の地酒を作っています。
その数は数百に及びますから
いくらお酒好きの方でもなかなか
全部をご存じという訳にはいかないでしょう。

同様にイタリアやイギリスには
各地域に織元があり、それぞれ
独特の生地を織っているのですが
日本に輸入される量が少なくて
知られていないミル(織物工場)が
ほとんどです。

左下のカイノックはスコットランドの
織元で、スコッチテリアのマークが
かわいいですね。


▼第138回 フロントライン

最近の上着は右写真のように
前ラインを左右にやや大きく開けた
軽快なデザインが主流です。

左写真のフロントラインは
それほど開いていません。
クラシカルな感覚がお好きな
若いお客様のご注文でお仕立てしました。
デザインのせいだけでなく
ハンドメイド特有の立体感がある
重厚な三つ揃いに
なっていると思います。


▼第137回 ベストの一番下のボタン

写真の襟付きベストは6つ釦ですが
通常は一番下のボタンを外して着用します。
ファッション誌にはときに
「19世紀の伊達男ボウ・フランメルが始めた」
「このボタンは留めないのがマナー」
といった記事が掲載されています。
それも間違いではないのでしょうが基本的に
服に付いているボタンを全て留めるのは
警察、軍隊の着こなしであり
実用主義は野暮なのだという考え方に基づいていると思えます。

ダブルの上着も同様の考え方で
右下の釦は留めません。

▼第136回 右利きの方の上着

 スーツを着て鏡に向かってまっすぐ立ってみてください。
右利きの方の場合、左袖からはワイシャツの袖口が見えないのに右の袖口からはたくさん出ていませんか。
冷静に見ると右肩が下がり、それに連れて首が右に傾いていることもあります。
50歳以上の男性なら少しも珍しくありません。
学生時代に運動部に所属していた男性に特徴的で、中でもテニス選手は顕著です。
テニスやゴルフ好きのスポーツマンだけでなく歯医者さんも農場、工場で働く方も
皆さん毎日右肩が下がる方向に体を捻って仕事をしているためです。
この特徴は年齢が高くなるにつれて進み、治るということはありません。
左利きの方は左肩が下がって左腕が伸びることになります。



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